9月に入り、着々と駅伝シーズン開幕の足音が聞こえてきた。夏合宿を終え、10月からスタートする駅伝シーズンに向けて体調管理も重要になる時季だ。
この記事では、学生駅伝三冠達成から早10年以上、再びトップ返り咲きを目論む早稲田大学のランナー別10000m持ちタイムを記載。その数字をもとに分析・展望を行う。
ライバルの動向は?⇒【青山学院大学駅伝メンバー2025】大エース黒田朝日がチームを牽引 安島&黒田&小河原の“2年生トリオ”がカギ
早稲田大学駅伝メンバー2025 主な10000m持ちタイム
※2025年8月終了時点
学年 | 選手名(出身高校) | 自己ベスト記録 | 4 | 山口 智規(学法石川) | 27.52.37 | 3 | 工藤 慎作(八千代松陰) | 28.31.87 | 2 | 吉倉ナヤブ直希(早稲田実業) | 28.46.86 | 2 | 山口 峻平(佐久長聖) | 29.11.26 | 4 | 間瀬田純平(鳥栖工業) | 29.13.46 | 2 | 山崎 一吹(学法石川) | 29.39.35 | 4 | 藤本進次郎(清風) | 29.39.50 | 3 | 武田 知典(早稲田実業) | 29.41.30 | 3 | 長屋 匡起(佐久長聖) | 29.42.54 | 4 | 宮岡 凛太(鎌倉学園) | 29.46.31 |
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大黒柱・山口智規を変えた「センゴ」への挑戦
少数精鋭の早稲田大学長距離ブロック。その背景には推薦枠の都合という大人の事情があるとはいえ、花田監督就任後はクラウドファンディングを活用しつつ着実に戦力の底上げに成功している印象だ。
なかでもチームの大黒柱的存在が山口智規だ。一昨年の上尾シティハーフマラソンでは、大迫傑(Nike)のハーフマラソン早大記録を更新する1時間01分16秒。。3年生シーズンはやや不本意な結果に終わったが、4年生を迎えてついに覚醒を遂げた。
本職ではない1500mをターゲットとしたトラックシーズン。「短いほうからアプローチしていかないと、世界に通用しない」との実感を得たオーストラリア遠征をきっかけにスピードを磨くことを選択。日本選手権で2位を掴み取り、ホクレンディスタンスは5000mで13分16秒56の学生歴代7位を記録。その勢いは止まらない。
さて、こうなると楽しみなのが三大駅伝の区間配置。昨年はエース区間を任されることが多かったが、スピードを手に入れて今なら出雲駅伝は2区、全日本大学駅伝も2区、そして箱根駅伝は3区の選択肢が浮かんでくる。いずれにしても区間賞争いは間違いないだろう。
山の名探偵・工藤慎作にエース区間起用の可能性浮上
山の名探偵・工藤慎作も山口智規と並ぶエース格のひとりだ。名探偵コナンになぞらえたゴールテープ時のパフォーマンスで知られているが、今年は日本学生ハーフマラソン選手権で優勝。7月に行われたワールドユニバーシティゲームズでは、大会新記録で優勝と団体の部での金メダルに貢献。その走りは山登り専門と呼ぶには失礼にあたるのかもしれない。
個人的な見解を述べると、工藤慎作は駒澤大学の山川拓馬に似ていると思っている。山川もスタミナ型かつ、ロードに高い適性あり。ただ平地力の向上とトレードオフで山登りに対する適性を失った感があったのも事実だ。私個人としては、工藤慎作には出雲駅伝6区、全日本大学駅伝7区、そして箱根駅伝は2区起用を提案したいところ。あれだけの走りを平地区間で活かせないのはもったいない。
鈴木&佐々木と歴代屈指のスカウティングに成功
さらにはルーキーも見逃せない。鈴木琉胤は高校1年生で3000mで8分01秒26という当時の高校歴代3位をマーク。高校3年生の全国高校駅伝では、1区で日本人最高記録を更新する28分43秒を記録し区間賞を獲得した。
入学後も勢いは止まらず、日本選手権では予選を突破。決勝でも積極果敢にレースを進めて社会人トップクラスのメンバー相手に健闘。1年生世代のみならず、学生屈指のスピードの持ち主だ。大迫傑の陰がチラつくのは私だけだろうか?
同じ1年生の佐々木哲は3000mSCでこちらも学生トップ級。高校駅伝でのパワフルな快走を見るより坂適性もありそうで、箱根駅伝で「山の名探偵」工藤慎作を2区に回して5区起用というサプライズがあっても驚けない。攻めのオーダーへのキーマンと言えよう。
名門完全復活の日は近い
その他、箱根駅伝3区区間3位の山口峻平、スタミナに秀でた長屋匡起、1区のスペシャリスト・間瀬田純平と上級生から下級生まで質・量ともに豊富。青山学院大学の原晋監督も充実の戦力に警戒を強めており、ピーキングに成功すれば3大駅伝のどれかに手が届く可能性は高いだろう。名門完全復活の日は近い。